Being on the Road ! in Hatena

タイトルは沢木耕太郎「深夜特急」トルコ編の「禅とは,途上にあること」という台詞から.

アメリカの夜

フランソワ・トリュフォー=監督、1973年フランス
どんな映画か全く調べず観た。三谷幸喜がオススメしていたという知識のみで。だから、どんな文脈でオススメなのか、そこをすっかり忘れていた。
意外にもコメディ映画だった!映画制作現場を映画にしちゃうってのも面白い着眼点で、多分これは実話。ニースの撮影所で、関係者が合宿生活して一本撮りあげるプロセスが細部までよく描かれた群像劇である。
しかし、いろいろな意味で「これはひどい」(笑)。フランス人のテキトーさに、もう笑うしかない。準主役の男優が、女に振られたという理由で撮影すっぽかしてエスケープ。酔っぱらいの元・美人女優はNG連発、台詞も覚えられない。水泳シーンのある女優が妊娠三ヶ月、お腹の膨らみが見えると別の話になっちゃうから降板か続投か、さあどうする?!そんな役者の心配もさることながら、台本は適当に変えられるわ、スケジュールは遅れまくるわで。しかも期日までに完成しないと撮影費用が、保険の掛け金が、とかお金の心配まで。監督は夜うなされるうなされる。トリュフォーさん本当にご苦労様なこってす。でも、現場では愛も生まれカップルが誕生。観るところたくさんあって退屈しない。
タイトルの「アメリカの夜」は原題”La Nuit americaine”。英語の題は”Day for Night”。全く対応してない訳語のためアレっと思うんだけど、「アメリカの夜」は専門用語。撮影上のテクニックで、夜のシーンを昼間に撮影しなきゃいけない時、カメラのフィルターを変えて夜のように見せるもの。スケジュールが順調なら夜のシーンはちゃんと夜に撮影できるのに…とか思いつつ辻褄合わせの苦肉の策。「どうしてこうなった!」感が切ない、しかしこれが人生の面白みってものよね。