Being on the Road ! in Hatena

タイトルは沢木耕太郎「深夜特急」トルコ編の「禅とは,途上にあること」という台詞から.

放射線と健康

舘野之男=著,岩波新書745
これは面白かった.
放射線が細胞間を通り抜けたり,いろんなものにぶつかったりしてどのような相互作用をするのか,つまり有害性のイメージがはっきりと理解できた.そして,放射線がどういう理屈で減衰するのか.これもイメージできた.
単位の解説も詳しい.もうremとSv,radとGyをみてもビビらずにすむ.
エンドポイントについても,確定的影響と確率的影響を論じるには放射線の単位からして違う.確定的影響の場合はGy, 確率的影響の場合はSv.Svに直す際に線種ごとのRBE(生物学的効果比)を考えるが,「効果」なのだから当然だが,固形がんをエンドポイントにするか骨髄障害をエンドポイントにするかでこの数値が違う.これは注意しないといけない.低線量の場合は確定的影響が起こることはないのは自明(閾値があることと同義).気をつけるべきは固形がんであり,これに対応するRBEを使うということ.GyからSvに換算する場合,目的が違ってしまうとSvの値が異なってしまう.
RBEに関して思ったこと.これって,(以下思いつきだけど,)金属の毒性で言うと,BqとかGyがトータル(物理量),Svがそのうち毒性に効いてくる画分(バイオアベイラビリティー)というアナロジーで合ってるかな?
バイオアベイラビリティーは金属種によっても変わるし,条件(というか取り込む部位とか)によって変わるんだけど,それらの比が全部調べられてる(比というよりも基準化されてるというべきかな.基準とする金属のAという状態を1とすると・・・・,というような).その比のDBができててルーチンで使われている...すごいことだ.
本当に,放射線ってよく調べられているなあ.