Being on the Road ! in Hatena

タイトルは沢木耕太郎「深夜特急」トルコ編の「禅とは,途上にあること」という台詞から.

明解 水質環境学

浦瀬太郎=著,プレアデス出版

心の師と仰いでいる(先輩なので,実際に師でもあるのですが・・・),浦瀬さんが書かれた教科書.すみません,ようやく買いました.

下水処理って不思議な分野だった.
自然現象と化学プラント内の反応という対極にあるものが同居している.両方をよく知る必要があるという意味ではかなり学際的な分野だったと再認識した.ストリーター・フェルプスの式とか,懐かしすぎる.
しかも現場(処理場)を持たせてもらって,日々刻々と変わる水質データが取り扱える世界ってワクワクするよね.
浦瀬さんのすごいところは,分析の知識が実務面にほどよくリンクしていることだと個人的には思う.下水や廃水では微量成分に目が行くことは殆ど無くて,また,法律で決まっている物質以外は測定しない,という,言ってみればGCは使うけどGC/MSは使わないみたいな感じなんだけど,そこを突き抜けている気がする.この本にも環境試料(水)の分析やデータの見方が結構突っ込んで書いてあって面白かった.

話は飛ぶが,先の畝山先生の本にもちょこっと書いてあったように,測定の難易度によるリスクバイアスってある気がする.測りやすくて検出感度が高い物質ってどうしても人々の目が向きがちというか・・・・.無駄に叩かれないためには公定法で(わざと?)検出感度を鈍くしておく(NDが出やすくしておく)のが有効,みたいな現場センスってあるよね.NDだったら騒がないけど,値が出たらとたんに騒ぎになるから.全然リスクと関係なくて馬鹿馬鹿しい風潮だなあ思っているけど,現実はそうだよなあと.アフラトキシンB1などは,逆にもうちょっと公定法の感度を上げてきちんとモニタリングしなければならないと思うのだが.
ということで,リスクと関わる者も分析値の意味をある程度は勉強しておかないと,と再確認した.