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タイトルは沢木耕太郎「深夜特急」トルコ編の「禅とは,途上にあること」という台詞から.

殯(もがり)の森

河瀬直美=監督,2007年日本
3.11の大震災があった直後に鑑賞.母(68歳)と.
地震津波の生々しい映像の大量インプットとも相まって,いろいろな意味で人間は自然には勝てないと思いながら複雑な気持ちで観た.ひさびさに分かりにくい映画.「萌の朱雀」よりもさらに分かんない.でも,だからといってイライラするような作品でないのが不思議,面白かったよ.
高校生以下でこの映画が面白いと言える人はほぼ皆無だろう.グループホームの日常,ヘンテコな和尚さんの分かったような分からないような説教,そして33年前に亡くした奥さんに会いに行く音楽家の一見奇怪な行動・・・など.ところどころ可笑しみがあるが,とりたててドラマがあるわけでもなく,ストーリーすらもない.
母は,響き合うものがあったようだ.その年になると,あの世に逝くことを意識して毎日過ごしているので分かるらしい.私は大切に思う人を亡くした経験が極めて少ないので,そのへんのチャンネルは不足気味.
河瀬監督の前作,「萌の朱雀」では舞台が奈良県吉野,といえば「ガラスの仮面」の紅天女の梅の木のイメージが強いが(←アタシだけ?),今回の舞台も案の定奈良県だった.エンドロールによれば奈良市田原町.ここも吉野に劣らず圧倒的な自然.鑑賞中,この自然に飲み込まれて「私,今この瞬間に風化して骨になるかも」という感覚に襲われた.映像の強みだねぇ.(河瀬監督はこういう表現がマジ上手い)
ドキュメンタリーとフィクションを行ったり来たりするような話の流れで,細部も気になるしで奥が深い.たとえば冒頭の葬儀の列は雰囲気からして土葬?とか(奈良県はまだ土葬の風習が残るらしい,ロケ地は古墳とか近くに沢山あるとこだが全然関係ないか).携帯も,民家がすぐそばなのにつながんなくなる,霊的なものの仕業?とか.
殯(もがり):意味
「喪上がり」の音が変化したものとされている.以下,Wikipediaより

殯(もがり)とは、日本の古代に行われていた葬儀儀礼で、死者を本葬するまでのかなり長い期間、棺に遺体を仮安置し、別れを惜しみ、死者の霊魂を畏れ、かつ慰め、死者の復活を願いつつも遺体の腐敗・白骨化などの物理的変化を確認することにより、死者の最終的な「死」を確認すること。その棺を安置する場所をも指すことがある。