Being on the Road ! in Hatena

タイトルは沢木耕太郎「深夜特急」トルコ編の「禅とは,途上にあること」という台詞から.

「ゼロリスク社会」の罠 「怖い」が判断を狂わせる

佐藤健太郎=著,光文社新書
・本能的リスク判断(p.27)
「本能は大変強力なシステムです.人は思わぬ危機にさらされた時,理性で判断すべきことであるとはわかっていても,どうしても本能のほうが頭をもたげてしまうのです.
この結果,人にはリスクを見ないようにしたり,あるいはリスクを過大に見積もろうとしたりする,心の偏り(バイアス)が生じるのです.」

正常性バイアス(p.39)
「心の偏り(バイアス)のひとつに,「正常性バイアス」と呼ばれるものがあります.何か大きな異変が起こっても,「これはそう大したことではない,日常親しんだ状況の延長で読み解けるものだ」と人は思いたがり,リスクを過小に見積もってしまうのです.」
3.11当日の私はまさにこれだった.新幹線の中で地震に遭い,栃木県内の避難所に移動し,今までに経験したことのないようなとんでもない状況だったのに,「明日は山形に帰ります」と夫にメールしていた.今から考えると,リスクを見ないように見ないようにという正常性バイアスが思いっきり働きまくっていたのだ.恥ずかしい限りだが,これが正常性バイアスというものなんだ,ということを読んで実感した.

・手頃なリスク入門書
コンテンツの重さが適切.実際の章立ては7章で,7つのトピックに比較的長めのコラムが連なるという構成.読みやすかった.こういう新書が書けたらいいな.

・リスク的思考を妨げているものは何かについて考える
私の仮説だけど,小学校の家庭科の弊害が大きいのではないか.自然=OK,化学=×のような二分法とか農薬=悪いものとか,ステレオタイプな知識がこの段階で刷り込まれるような・・・.こうなってしまうと,リスクの大きさを知ってうまく管理して使おうという思考回路にはなかなかならないと思う.