Being on the Road ! in Hatena

タイトルは沢木耕太郎「深夜特急」トルコ編の「禅とは,途上にあること」という台詞から.

危機の宰相

沢木耕太郎(著) ,文春文庫
戦後日本が最もドラスティックに変化した1950年代後半〜1960年代前半.池田勇人によって所得倍増というスローガンが声高に叫ばれた.その裏事情〜〜〜私は池田首相の顔も全然知らないけれど,沢木さんに書かれれば親しみのあるオッサン顔を勝手に想像して読み進む.
そのころ発行の暮しの手帖をじっくり読んでみると,1号ごと(発行は3ヶ月おき)に暮しが豊かになってくのがわかるわかる.街行く人の服装でわかるわかる.でも農村は取り残され感で.
ちょうど上記「農協の大罪」にあった農協創成期のようすが目の前に立ち上がってきて,こういう多面的な読書は今しか出来ないなぁ〜と結構感動している.独りよがりだけれど.

わが敬愛する沢木耕太郎様.文章の爽やかさは青い海のよう.あまりにも爽やかなので一部書き写す.そしてウットリ・・・

下村は,この「反安保」のうねりを,自分たちがどこへ向かって進んで行けばよいかわからない国民の苛立ちだ,と見ていた.「日本国民の生きる道はちゃんとあるのだということを明示すれば,その苛立ちは消える」という固い信念があった.池田の手になる「所得倍増」がその一つの道になるはずだった.(p.212)

↑「下村」とは当時大蔵官僚の下村治さん.