Being on the Road ! in Hatena

タイトルは沢木耕太郎「深夜特急」トルコ編の「禅とは,途上にあること」という台詞から.

第2世代バイオ燃料のEPR

セルロースなどの木質系バイオマスを材料としたバイオエタノールを,第2世代バイオ燃料というらしい.セルロースを材料とした場合,そのエタノールのエネルギー収支比(EPR)というのは,トウモロコシなどの食料を材料としたエタノール製造のEPRと,どのくらい違うのだろうか.

セルロースを材料とすると工程が複雑になるのは自明だが,その複雑な工程の維持に石油エネルギーを使うことになり,結局EPRが悪くなるのでは?という疑問が生じた.

まず直感的には,「糖はあっという間に醗酵が進む.それに対し,自然界のセルロースは醗酵の前に腐敗などの「改質」過程があって,この過程でCの大部分がCO2となってしまう」って理解しているので,一般には大量の草を集めてきて(この草は石油エネルギーを投入して栽培されたものではないので,原料だけを比較すればトウモロコシよりCO2排出は少ないのではあるが),ほとんどをCO2にしてしまって,少しの糖を取り出してそれをエタノールにするのではないか,と思われる.こんなのいやだ〜!
←これに反論するデータ,ないかなあ?「自然界と化学プラントでは全然違うんだよ」,とか.

冗談はさておき,現在どのような研究が進行しているのかを見てみる.

「北海道ソフトセルロース利活用プロジェクト」では,アルカリ処理をするということだ(リンク).醗酵菌は強アルカリではうまく働かなさそうだから,pH調整剤入れたりする手間は発生しそうだ.そもそもアルカリ処理だけでは(リグニンとかの木質成分を取り除けたとしても),醗酵に適する糖になっていないのではないかと思ったり.
←アルカリ処理の糖への転換率データないかなあ?

産総研のページを斜め読みしたら,前処理した後,糸状菌による「酵素糖化」と遺伝子組み換え酵母によるエタノール醗酵を同じ槽で行う,というプロセスの提案があった.糸状菌による「酵素糖化」の収率は相当低いのではないかと予想するが・・・.また,バッチ処理は系を制御しやすいが大量生産には向かないし,(連続処理より)石油エネルギー投入量は増えるはずだ.巷で言われている「コスト高」の課題は当然としても,この系ではどんなに工夫をしてもコストはかなり高いままだし,相当量の石油エネルギーを追加的に投入することが必要と予想される.その上で材料のセルロースの持つCのうち1/10(仮)くらいしかエタノールのCにならないとすれば(1/10でもかなりいい方だが),この工程を採用するモチベーションはとても下がるなあ.
←この系のC収率データないかなあ?
しかも,糸状菌のオンサイト生産っていうのも気になる.糸状菌のpure cultureの培養を別に行う,ということなのだろうか?この工程にも炭素源やエネルギーが投入されるのに.手間かかりそう!

勉強することがたくさんだorz.