Being on the Road ! in Hatena

タイトルは沢木耕太郎「深夜特急」トルコ編の「禅とは,途上にあること」という台詞から.

「ハウルの動く城」と「東京ゴッドファーザーズ」

先月,「ハウルの動く城」を観に行った。映画館は混んでいた。行ったのが冬休み直前の休日だったこともあるが,チケット売り場の床が見えないなんて久しぶりだ。映画館に客が戻ってきているのかもしれない。
それはそれとして,「ハウルの動く城」は,残念ながら面白くなかった。もちろん,至る所に宮崎駿のサービス精神は感じられたし,空は飛ぶし,映像は申し分なくきれいだし,木村拓哉の声もぴったりであった。
でも,やはり,分かりにくいのである。もう少し書くと,映像として提供している情報のうち映画の結末に関係してくるのが,わずか30%と言う感じ。あとの70%が無駄なのである。そういう不完全燃焼な感じがとても気持ち悪く,なるほどと思う感覚を得られないまま,へえー,で終わってしまうのである。宮崎駿は,年々この傾向が強くなってきているような気がする。悪く言えばひとりよがり。ああ,もったいない。なのに,こんなに多くの人が見ているというのが現実。知名度と言うのは恐ろしい。
ここで,2ヶ月ほど前に,ある飛行機の中で観た「東京ゴッドファーザーズ」を思い出した。監督は今敏(こんさとし)さん,製作がマッドハウスという小さな(というと失礼かな)アニメ製作集団の作品である。この映画はほとんど宣伝されていないのか,私も名前すら聞いたことなかった。深夜の飛行機でどうしても眠れなくて,日本語のプログラムだからイヤイヤ観た,という程度である。しかし,なかなかどうして,満足できるものだった。ストーリーの分かりやすさと温かさに加えて,キャラクターの性格や日常生活の描写(ホームレス,家出少女,ヤクザが出てくる。その着眼点も新鮮!),小道具の伏線,そして空中活劇(宮崎アニメっぽいことは否めないんだけど)と,えらく感激して,また寝付けなくなってしまった。こういう映画こそ多くの人に観て欲しい。(補足:キャラクターは全般に「ルパン3世」っぽい。アニメーターの名前の中に「小西賢一」とあり,この人がジブリ出身であることは知っていたので,やはり,とニヤリとする。ちなみに,「ハウルの動く城」でもマッドハウスは協力していたようだ。)
これら2作品の観客動員数は,2桁くらい違うのだろうな。観客数は宣伝費用に比例すると通常は考えられるが,実際の宣伝費用はそれこそ5桁くらい違うかもしれない。自分がプロデューサーなら,「ハウル」の宣伝費用のうちいくらかを,「東京ゴッドファーザーズ」に回したい。
市場で広く宣伝されている作品が満足いくものとは限らない,とつくづく感じた。そう,自分のお気に入りは,宣伝に惑わされず自分で見つけないと。