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タイトルは沢木耕太郎「深夜特急」トルコ編の「禅とは,途上にあること」という台詞から.

技術システムの神話と現実 原子力から情報まで

吉岡斉名和小太郎=著、みすず書房、2015年

p68 「安全文化は安全を専門家によって組織内に抑え込む、これに対して情報セキュリティ文化は、それが不可能なので、ユーザーにまで安全についての覚悟を求める、という構造になっています。」
→情報セキュリティ文化との対比が非常に面白い。リリースする前にユーザーが100%の安全はないと合意しておくということ。見切り発車で、不具合が出たらそのたびに解決する。これで取り返しのつかないことが起こるのは極めて稀、という見立てがある。
p85 「プライバシー保護の機能をあらかじめ技術に組み込んでおけという議論」
→技術主導型の方法論、プライバシー・バイ・デザインの視点がこのとき既にある。
p180 もんじゅ事故
→自分のあまりの無知さに驚愕。
ナトリウム漏れ事故について。冷却材ということは、Naが低温である?Naは単体金属だがなぜ金属Naが冷却機能を持つのか?
https://jopss.jaea.go.jp/pdfdata/JNC-TN9410-2005-011.pdf
こちらをにわか勉強した。

高速炉の冷却材として用いられる液体ナトリウムは、水と比較して熱伝導率が高く(水と比べると約120 倍)、 加熱面近傍での層流底層における熱抵抗が小さくなる。さらに、遷移層を経て壁から離れた乱流域においては、熱伝導の効果に乱流拡散による熱移行が加わる。この結果、水と比較して①熱伝達率が3倍ほど高くなる、②エネルギー拡散が促進される結果、局所的に急峻な温度勾配が生じがたくなる、ことが特徴的である。また、1気圧での沸点が約880℃と高く、軽水炉のように運転圧力を高くする必要がない。同じ理由により冷却材の温度差を大きく取れるため、自然循環力が大きくなる。これは、ポンプなどの動力や運転員の操作によることなく、配管や容器といった静的機器が健全でありさえすれば崩壊熱除去が可能であるという固有の安全性を有することにつながる。

なるほど、まとめると、熱伝導率が高く、高温でも体積が大きく変化せず(=沸点が高い)、しかし対流や拡散によって熱を外に移動させたいため液体の状態で機能する(固体ではダメ)、この条件を満たした物質が金属ナトリウムだったということね。私が高校の授業で見た金属ナトリウムは、ナイフで切れる羊羹のようなものだったが、温度が数百度になると液状になるのね?

トリチウム問題。福島第一原発事故後の出版だからこれにも言及されている。
トリチウムは「自然のものではない」から嫌われる。毒性の大小は関係ない。それは日本特有?東アジア特有?それとも先進国で共通?世界共通?