Being on the Road ! in Hatena

タイトルは沢木耕太郎「深夜特急」トルコ編の「禅とは,途上にあること」という台詞から.

花の影

陳凱歌=監督,1996年中国・香港合作
20世紀末,私は,中国映画と香港映画をトコトン観たくて,中国語,広東語を熱に浮かされたように勉強していた.
張 國榮(レスリー・チャン)との出会いは衝撃的で,「さらば、わが愛/覇王別姫」「君さえいれば/金枝玉葉」「ブエノスアイレス」で魅せたレスリーの顔はどれもリアルなのか夢なのか分からない,生き生きとしつつも儚く,こんな俳優がいるのかと怖くなったものだ.
花の影」,これもずっとずっと観たかったが,レスリー自死し,なんとなくその後,彼に向き合うのが怖くなったー,というのが本音で,あっという間に十数年.でも,この度の香港の市民デモを見ていて,レスリーたちが見ていた香港の空気にもう一度触れたくなったので,DVDレンタルで選んだ.
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1997年に中国に返還されるまでの香港.時代の流れに翻弄されつつ,人間らしく正直に生きる人々が,名実ともにすごい”密度”で暮らしていた香港.あの熱気がピタリと1990年代の香港映画に保存されているのであった.私はそれが大好きで大好きでー.その熱を,21世紀になっても,いつまでも大事にしてほしいから,香港市民の活動を応援しています.
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で,「花の影」.レスリーまさに全盛期の映画で,お肌ツヤツヤ♡.クリストファー・ドイルのカメラにしては,落ち着きがあった(ただし色彩は抑え気味で暗い).鏡の使い方,ものすごい上手ね.
1920年代.蘇州の大富豪の家”江南ロウ(まだれに龍)家”が舞台なのだけれど,若旦那さまの目がうつろ・・・そう,アヘン!!若旦那様に嫁いだ姉を追って忠良(レスリー・チャン)もその富豪の家にやってきた.もう,姉さんもアヘンに毒されまくっている夫をサポートすることが生活の中心になっているから,色々おかしい....
精神的にちょっとおかしくなった姉の仕打ちに耐えられずその家を出た忠良.彼は長じてイケメンになり,なのに,姉の影響か女性を愛せなくて,上海でジゴロに.ジゴロでも,かなり悪質で,お金持ちの人妻に言い寄ってだましてお金を奪う組織の手先というわけ.相手が本気で愛しちゃうと,そりゃあ大変なことに.
そして次のミッションはロウ家の若旦那の妹・如意(コン・リー)に言い寄ることであり,あんなに憎んだロウ家に里帰りする忠良.姉の現実,斜陽のロウ家,乗っ取りと企みを目にする.そして如意が当然のように忠良を好きになるよねぇ....その後二人がどうなるかはここには書かない.
退廃的で甘美な描写,で定評のある映画なんだけど,最後の,とうとうアヘンに毒された如意の表情が印象強すぎる.「アヘン,怖っ!!」という感想しか残らないくらいインパクトあった.